フォルクローレとは


 「フォルクローレ」とは、英語のフォークロア(Folklore)をそのままスペイン語読みにしたものです。もともとこの言葉は、「民族的」とか、「伝説を受け継ぐもの」など、ひろくは民族学的な意味合いをもつものの総称です。伝統芸能や音楽、また衣食住にもフォルクローレという言葉があてはめられるわけです。しかし最近では特にラテンアメリカの民族音楽を意味する音楽用語として使われるようになっています。

 「ラテンアメリカ」はパナマ海峡によって二分された南北アメリカ大陸のうち、北アメリカ大陸北部に位置する、アメリカ合衆国とカナダの2国を除いた部分とカリブ海諸島などの付随する島から構成されています。中南米とも呼ばれているこの地域は、文化的・歴史的に共通しているところも多く、そのため北アメリカのアングロアメリカと区別して、ラテンアメリカと呼称されています。

 ラテンアメリカに住む人々の人種は、独自の文化を持つ先住民のほかに、征服者であるヨーロッパ、リベリア半島の白人や労働者の力の不足を埋めるためにアフリカ大陸から連れてこられた黒人で構成され、彼らが互いに排除しあうこともなく、融合することによってラテンアメリカの特徴である、混血による多様な文化を生み出してきました。それは音楽の世界でも同様で、伝統的なインディオの歌と器楽演奏、スペインの都市音楽、アフリカの黒人のリズム、それらが互いに絡み合い、とけあいながら育んでいったのが今日のフォルクローレなのです。

 ひとくちにフォルクローレといっても様々でそれぞれの地域における文化の混じり方の違いにより音楽の違いがあります。一般的にかつてインカ帝国の中心だったペルー、ボリビア、エクアドルなどはインディオ色が強く、アルゼンチン、チリ、ウルグアイなどは反対に白人色が強くなっています。またさらにインディオは、異なった文化を持つ数百という民族からなり、それぞれが絡み合い、音楽をつくっていくのです。またフォルクローレによって伝えられるテーマも、自然の美しさを讃えるもの、日々の暮らしや人間関係などをうたったものから、侵略や差別に対する主張を表したものまで、千差万別です。しかしテーマこそ異なりますがフォルクローレがアメリカの人々の「声」であることに違いはないのです。

 (第9回 筑波大学・図書館情報大学合同フォルクローレコンサート パンフレットより転載)


 <参考文献>

  • エル・フォルクローレ   浜田 磁郎   晶文社   1980
  • 第3世界を知る 4  ラテンアメリカの世界  江口 朴郎・岡本 古志郎・鈴木 正四   大月書店   1984
  • 最新ケーナ教本   河本 好民   中南米音楽   1993



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